2021年12月9日(木)にオンラインにて、「Challenge×Woman Meetup vol6」を開催しました。
「『失敗談振り返り会』失敗から学び、2022年は次のステップへ!」と題し、2021年の総集編として、過去に登壇いただいた女性起業家のみなさんに再び登壇いただき、これまでの事業活動における失敗談をお話いただきました。
起業の世界において、失敗は決してネガティブなものだけではありません。失敗の経験から学び得ることを次に活かすことが重要だと考えるからです。女性起業家がどんな失敗をしてどう乗り越えてきたか、またまだ模索中でどんなことに挑戦しているのかなど、今回も起業家のリアルな話がたくさん登場しました。
登壇者ピッチ
春日井環境アレルギー対策センター 代表 加藤美奈子さん 非営利型一般社団法人日本室内空気保健協会 代表理事/環境アレルギーアドバイザー支援ネットワーク愛知 代表者
加藤さんはご自身を「環境アレルギー社会変革者」と称し、アレルギー予防教育と空気の調査(測定)をされています。今回は「コロナ禍大ピンチを乗り越えた方法」をお話いただきました。
娘さんの喘息をきっかけに、病気育児の子育て支援サークルを立ち上げ、アレルギー啓発活動を開始。その後、春日井環境アレルギー対策センターを起業し、経営者となられました。
コロナ禍に突入し、空気の数値化を求める企業が増える中でビジネスチャンスが到来したと思った矢先に、娘さんが病気で入院。まず一つ目のピンチです。面会も満足にできない中、とにかく冷静に、ビジネスに向き合うことに注力し、「空気を真剣に考えるコミュニティを作ろう!」と決意します。
行動の第一弾は「日本初!室内空気質改善コンテスト」、第二弾は「非営利型一般社団法人日本室内空気保健協会 設立」。しかし、コンテストの応募は4組・・・。これではいけないと、名だたる研究者、業界関係者の方々に声をかけ、コンテストの審査員としてだけでなく、コンテストを一緒に盛り上げていただいたとのことです。様々な広報媒体を活用し、啓蒙活動も盛んに行った結果、22組へ応募者も増え、コンテストは大成功に終わりました。またその後は、入賞者のビジネスマッチング大会に繋げることもできました。
コロナ禍で達成できたこともある一方、若者や専門家の教育への課題はまだ残ったまま。そこで、学生や若者が集まる塾などで建築やモノづくりの人材育成の一助としてコンテストの応募作成を共に考えるセミナーを開催したいと加藤さんは考えています。今後は教育業界とタッグを組んで課題解決に取り組みたい、とのことでした。
コメンテーターの倉田さんからは、「コンテストの応募状況が芳しくない中、やめることも選択できたのに、アプローチを改善し続けられたのは大変たくましい。女性の起業は目的が明確なことが多く、加藤さんもその例だなと感じた。感動しました。」との講評をいただきました。
・春日井環境アレルギー対策センター https://www.kasugaikankyou.com/
・一般社団法人 日本室内空気保健協会 https://www.iaha.or.jp
・環境アレルギーアドバイザー支援ネットワーク愛知 https://kanalle-aichi.jimdofree.com/
株式会社じょさんしGLOBAL Inc. 代表取締役 杉浦加菜子さん
助産師はお産の現場だけでなく、女性の一生をサポートするお仕事です。杉浦さん自身も海外で子育てを経験されて、出産・子育て等で孤独や不安を抱える女性をサポートしたいという想いから、じょさんしGLOBAL Inc.を起業しました。
病院の現場で活躍されていた杉浦さんがビジネスの世界へ飛び込み、そこで3つの失敗を経験します。「人を信じ過ぎてしまった」「人に任せ過ぎてしまった」「非エッセンシャル思考で行動してしまっていた」・・・どれも、誰でも経験し得る失敗ですね。杉浦さんは、スタッフととことん向き合い、同じ助産師でも一人一人違うことを学びます。また書籍などでの学びから、3つの失敗からの脱却を果たしました。
現在、世界中に住む14名のスタッフと共に、妊婦さんや子育て中のママからのオンライン相談を受けたり、企業向けに女性の身体や育児休暇のセミナーや管理職研修を開催。スタッフだけでなく、約200名の専門家や約3,000名のユーザーのサポートを受けながら、サービスを提供しています。「女性が心身ともに健やかに生きられる、働ける未来の実現に向けて、今後も活動したい」との想いを伝えていただきました。
コメンテーター倉田さんより、「社会課題に向き合う姿が素晴らしい!女性の身体のことなど、個の問題を声に出して言い難い社会に向き合う活動に期待したい。」とのコメントをいただきました。また別のオーディエンスからも「フェムテックとの相性が良さそう。」などのアドバイスもいただきました。
・株式会社じょさんしGLOBAL Inc. https://josanshi-cafe.com/
Vivaおかざき!! 代表理事/株式会社link design lab 代表取締役 長尾晴香さん
日本に住む外国人と日本社会を繋げる活動をされている長尾さん。失敗談を交えながら、長尾さんが試みているチャレンジについて、お話いただきました。
2010年に非営利団体を立ち上げ、外国籍の子供たちへの教育支援や研修等を通じた地域での支援体制の整備を行っています。また、政府が積極的な外国人人材受け入れを掲げる中、長尾さんは2019年に株式会社link design labを設立し、多文化共生の推進へもチャンレンジし、外国人就労者の日本語研修を提供してきました。
新会社も立ち上げ、これから!という時に、コロナ禍に突入。外国人の受け入れがストップし、来日している外国人人材への研修や教育も相次いで打ち切りとなりました。元々非営利団体からスタートしたため、営利活動に対する認識が低いという問題点も浮き彫りに。企業向け事業をつくる新たなチームを立ち上げ、厳しいコロナ禍でも外国人人材に対する研修や教育が必要であると感じてもらえるサービス作りにまい進しています。
また、コミュニティによって、外国人に対する認識の違いがあることにも気づかされます。特に企業からの要求はシビアで、ただ日本語を習得したら良いというだけでなく、求められている日本語能力の度合い、日本人の日本語能力の問題、コミュニケーション方法の課題など、様々な課題と向き合う必要があります。まだまだ課題が見えてきた段階ですが、一つ一つ解決し、日本人、外国人共に人材の定着が実現するような活動を模索していきたい、と長尾さんは話しました。
コメンテーター倉田さんからは、「需要は高いが大手も参入している事業。中小企業にもたくさんの外国人就労者がいるので、自前で教育できない企業を集めて教育するなど、営利事業としても可能性はある!」とのアドバイスがありました。
・一般社団法人 ViVarsity(ビバーシティ) https://viva-okazaki.com/index.html (2021年11月に「Vivaおかざき!!」より名称変更されました。)
・株式会社link design lab http://link-dl.com/
星空Kids English&Japanese 代表 浅野順子さん
「来年はもっとチャレンジしたい!」
この言葉でスタートしてくださった浅野さん。「コミュニケーション=つながることを体感し、発信できる人を育てる」「ライブで世界を繋げる」ことをミッションに、英語、日本語、表現教育を提供する事業をされています。
コロナ禍で対面活動ができない中、「あいち企業コンパス」に挑戦。ミュージカルの経験がある浅野さんは、子供たちと英語でダンスを一から作り上げるプログラムを開発し、提供を開始しました。しかし、うまく進めて行くことができず、別の方法を試みます。それが世界と名古屋の子供たちを繋げる国際交流プログラム。非英語圏(グアテマラ)と名古屋の子供たちが英語を使って交流する内容で、お互いの好きなことや文化について英語で紹介し合うというものです。「非英語圏の子供たち同士が英語を使って交流する、このプログラムの成功で光が見えてきた」という浅野さん。地元名古屋の子供たちが自立的に学び、広い視野をはぐくむきっかけ作りを今後もしていきたいと語ってくださいました。
今回のテーマである「失敗談の振り返り」ですが、浅野さんは「失敗が無いことが失敗だった」と話されました。安全志向で、大きなチャレンジをあまりしてこなかった、というこれまでを振り返り、子供向けの国際交流の成功から「来年はもっと大きなチャレンジを!」と前向きな想いを伝えて下さいました。
コメンテーター倉田さんからは、「同じようなサービスを提供しているところは国内、外資問わず結構あるが、どこも高い。同業のサービスをしっかり研究し、差別化をうまく図れば良いビジネスになりそう。」とアドバイスと共に、心強い励ましをいただきました。
・星空Kids English&Japanese https://ameblo.jp/smilejun777/
基調講演:株式会社ラッシュ・インターナショナル 代表取締役 倉田満美子さん
イベント後半では、コメンテーターの倉田さんに起業の経緯や創業期の失敗談などをお話いただきました。
「本当にお客様の実務に役立っているの?」からの起業
倉田さんは現在、株式会社ラッシュ・インターナショナルの代表取締役として、スタッフ約100名(うち社員約30名。スタッフはほぼ女性!)と共に、Webサイト制作・運用、SNS運用、アンケート調査・分析などを展開する会社を運営されています。
大学卒業後、大手自動車メーカーに入社されましたが、寿退社が当たり前だったこともあり、倉田さんも結婚を機に退職。「実は仕事に満足していなかったのも退職の理由」と話された、倉田さん。仕事で身につけたパソコンスキルを活かし、フリーのパソコンインストラクターに転身されます。人気インストラクターへと順調にステップアップされた倉田さんでしたが、パソコンメーカー監修のもと行われるパソコン教室に疑問を持たれます。
「ここで学んだ内容で、お客様は本当に実務で活用できるのだろうか?」
お客様ごとにカスタマイズしたカリキュラムをメーカー側に提案しますが、「こんなことをしては赤字になる」と突っぱねられ、「それなら自分でやる!やってダメなら、やめればよい」との思いで、1to1のパソコン講座を提供する会社を立ち上げました。
一人での起業でしたが、「たくさんのインストラクター仲間に助けられた。また、創業期(1990年代中ごろ)は世の中がデジタル時代への転換期だったこともあり、スタートは順調だった」とお話されました。
起業した時の精神を忘れず、失敗した時に振り返る
起業家歴27年の倉田さんも、「ビジネスのことを何も知らずに、想いだけで起業した」と。創業期はたくさんの失敗を経験されました。
頼まれたことは色々受けてしまっていた倉田さん。しっかり契約書を交わさずホームページ制作の仕事を受けてしまい、なかなかデザインが決まらず、誰が悪いのかも分からず、その判断基準も持っていない・・・スタッフもどんどん疲弊し、結果的に赤字を出してしまいました。倉田さんは言います。
「当時は仲間を守る術を知らなかった。どんなスモールビジネスでも、約束したことをきちんと証拠に残さなければいけないことを学んだ。また、経営者である自分とスタッフの想いが同じとは限らない。自分と人は違う、その認識を持つこと。いつまでに、ここまでやるという目標を自分でも持たなければいけない。」
また、「”失敗”はダメなことではない。しかし、失敗する度に、起業した時の気持ちや目的、なぜ守られている会社の従業員ではなく起業してまでやっているのかを思い返す必要がある。『失敗した時にどうするべきか?』の部分が、起業した時の気持ちとリンクしていくことが重要で、それが”理念”となるのだろう」とお話してくださいました。
その後、株式会社アイアイシー 平松二三生さんも交えて、座談会へ。チームビルディングや、起業家が気になるお金の話もして下さいました。
最後に、倉田さんの先輩経営者の言葉をお贈りいただきました。 「恩返しではなく、『恩送り』をしなさい。後を追う後輩起業家に知識や経験を伝えてあげなさい、と教えてもらった。恩返しではなく、恩送りを。このスキームこそが起業家の醍醐味!」
登壇者もオーディエンスも、エネルギッシュな倉田さんのお話に終始魅了された時間となりました。
・株式会社ラッシュ・インターナショナル https://www.rush-i.com/
参加者の声
登団者の皆さんの思いや、倉田さんや平松さんの経験談が参考になりました。起業して継続していくためには、ぶれない理念が必要だと改めて感じました。
色々な企業が愛知県にはあり、元気な女性もたくさんいると実感しました。他地域から越してきたので、地域企業がどんな感じなのかを知ることができた。
皆さんが起業するためのものすごいパワーを持ってらっしゃったことに本当に尊敬致します。また、起業のタイミングでコロナの影響を受けられた方は、その影響にも負けず事業を継続されていることにも感心致しました。
最後に
6回目となる今回は、4名の登壇者、コメンテーターに加え、東海地域内外から約20名のオーディエンスに参加いただきました。今回は登壇者に「失敗」についてお話いただきましたが、長らく続くコロナ禍による影響の話も出てきました。来年こそは、より良い世界で羽ばたきたい、そんな希望や決意が感じられる時間となりました。
次回のChallege×Woman Meetupもご期待ください!
異能vationプログラムとは?
学び舎mom株式会社、MUSASHi Innovation Lab CLUEは「異能vationネットワーク拠点」に参加しています。
「異能vationプログラム」は、ICT分野において破壊的かつ地球規模の価値を創造するためのプログラムです。既存の常識にとらわれない独創的な人材の挑戦を支援するとともに、異能と異能が掛け合わされることでさらなる独創的な発想が生まれるような環境を提供します。< 異能vation HP:https://www.inno.go.jp/ >
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